THE GHOST IN MY ROOM

 コナーが「映画を見たい」と言い出した。私はてっきり映画館に行くのだと思ったが、どこで用意したのか、今や“化石”と呼ばれている大量の映像ディスクを我が家に運び込み、思わず「映画ってそういうことか」と呟く。しかし運び込まれた映像ディスクのジャケットを見て、自分の顔がこわばっていくのが分かった。コナーが持ってきた映像ディスクは何故かほぼ全てがホラー映画だったのだ。

「ごめん私はパス。悪いけど帰って」

 早口でそう言うと、コナーは無表情で私の顔を見た。

 コナーが映画を見たいと言い出したのは今回が初めてではない。「人間の娯楽を体験して同時に感情も少しずつ理解したい」と言いジャンル問わず様々な映画を一緒に見てきた。恋愛、アクション、サスペンス、ドキュメンタリー、ミュージカルに至るまで。その中にホラーがなかったのは私が苦手だからだ。

「ホラー映画ばっかり。知ってるでしょ。私が怖いの苦手なこと」

 両手を広げ肩をすくめながら言うと、コナーは何故かにこやかな表情を作った。

「ええ。知ってますよ。だから全てホラー映画をチョイスしたんです」

 はっきりと「知っている」と言われ、彼の心情が理解し難く眉間の皺を深くする。そんな私の顔を見たコナーは一歩こちらに近づくと、にこやかだった表情を再び無表情に戻し、言った。

「泣いているも怒っているも見てきたけど、得体の知れない何かに怯える君も見てみたいと思って」

 コナーの顔は無表情であまり人間らしくないのに、口調は明らかに私をからかいたいという意図が見える。何も言い返せないで居る私の腕をコナーが掴み引くとテレビ前のソファまで引っ張り、無理矢理にそこへ座らせられる。

「ほら、これはそんなに怖くないですよ。古い家に居る地縛霊が引っ越してきた家族を襲う話で……」

「やだってば、見ないよ、わたし見ないからね」

「ダメです。見ます」

「いやだーーー!!」

 私の体をソファに押さえつけたまま、コナーは映像ディスクを端末に読み込ませた。映画が始まったら目も耳も塞いでやる。そう思ったが映画開始と同時にコナーに両腕を拘束されてしまうのだった。