噛み砕いて仕舞い

 随分前から俺が感じていたへの想いなんかは、心の奥底にいつまでも居座って腐敗臭を漂わせていただろう。そんな風になってしまっても未だに想いを捨てられずにいる自分を哀れに思うが、やはりの姿を見るたびに湧き上がるのは愛おしいという感情だけだった。

 誰も居ない部屋に連れ込んでとりあえずは口唇を塞いでみた。本当はそういう愛情表現のひとつで体が繋がるよりも心を繋げてみたいなんて自分らしくもないクサいことを考えたりもするが、それが叶うことなんかこの先ないんだろうなという諦めの気持ちが胸が満たす。

「ごめん、……これで最後にするからさ」

 を抱きしめながら格好つけてそんな風に呟いてみるけれど、本当は“これで最後にする”自信なんかない。いつかまた顔を見て、声を聞いて、その香りをかいでしまったら、同じことを繰り返してしまうことは分かり切っているのに。

 呟きに対しは軽く身じろぎをすると、俺の腕に抱かれ胸に顔を埋めたまま小さな声で呟いた。

「最後にしないでください、趙さん」

 あーあ、お前は本当にずるいよ、俺の気持ちも知らないでさ。そんな言葉を口にしそうになって下口唇を軽く噛んだ。“俺の気持ちも知らないで”なんてそんな言い分ほど身勝手なものはないというのに。

 仕様もない自分の気持ちなんか汚いゴミ箱にでも捨ててしまえと思っていたのに、のその言葉で手が止まってしまった、止められてしまった。そしてまたこうやって、心が奪われていくんだ。

 “最後にしないで”なんておねだりするんならちゃんと責任取って俺のものになってよ、そんな台詞も口に出来ないまま、俺はただ抱きしめる腕の力を強くすることしか出来そうになかった。


‎(2021‎.9‎.‎28‎)‎