tokashite
の誕生日にプレゼントした深紅のリップ。俺以外の奴の前で使っている姿に嫉妬なんかするほど自分は器の小さい人間ではない。しかし口紅の味を知っているのは自分だけなのだという優越感を覚えているのも確かだった。
重なり合った口唇の隙間から熱い息が漏れ出す。甘く噛みながら舌を這わせると口紅の味を感じた。付着したのは僅かだろうが、それでもその感覚は強い。何とも言えない不快な味。そしてすぐに香りが鼻に抜けていく。
「ほんと、マズいねその口紅」
顔を離してすぐに呟くと、の表情が歪む。しまった、とでも言いたげに自身の口唇に指を這わせるその姿が酷く艶めかしく、思わずゴクリと唾を飲んだ。
「でもさ、……明日もつけなきゃダメだよ。分かった?」
握った手の平は冷たく、俺たちの熱い息とは正反対だった。深紅の色は二人の間で溶け合い、の口唇が汚れていくその姿に、俺はただひたすら「もっと」という言葉を繰り返した。
(2021.9.28)