迷子

 ハロウィンが終わると世の中はすっかりクリスマスムードで、まるで十一月なんかないみたいに振る舞う。クリスマスが終わればもうすでに今年は終わったも同然と言いたげな雰囲気で、私自身、まだ数日残っている今年を置き去りにして来年はどんな年になるだろうかなどと考えたりしていた。

 あと少しで年が変わるというそんなある日、大夢から呼び出された。珍しくご飯を奢ってくれて、ああ年明けは大雪かななんて感じてしまう。場所は以前にも行ったことがある古臭い町中華のお店。私は苦手な人参がたっぷり入っていることをすっかり忘れ、あんかけ焼きそばを注文した。お皿の中にある人参をお箸で掬い上げ大夢が食べているラーメンのどんぶりに入れると、大夢は「醤油ラーメンに人参は合わねぇだろ」と文句を言いながらも食べてくれた。

 食事を終えた私たちは店を出て、年末とは思えないくらいいつも通りの街をゆっくりと歩き始める。大夢は私の少し前を歩き、私はその大きな背中を見つめた。手を繋ぎたいと思ってもそれは出来ない。

「ねぇ大夢。年が明けたらお年玉ちょうだい」

「はぁ?なんで俺がお前に金やんなきゃなんねんだ」

「いいじゃん。あ、そうだ。一緒に初詣行こうよ。おみくじとか引いてさ」

「年始の神室神社は混むぞ。はぐれても探してやんねぇかんな」

「ええ、ひっどいなぁ。てかあのお店、相変わらず美味しかったね。また一緒に行こ」

「まぁ、暇だったらな」

 他愛のない会話を続ける。きっと大夢は私と話すのが面倒臭いと思っているんだろう。こちらに振り返ることもなく、いちいち反発するような返事をするのがその証拠だ。

「来年も、また、……会えるよね?」

 なんとなく不安に駆られて問いかけた。目の前にある大きな背中がどこか遠くへ行ってしまうような、そんな気がしたからだ。

「……ああ」

 大夢の返事は妙な含みがあった。振り返って私の目を見てはっきりと返事をして欲しい。しかしそれをしてくれはしない。私はたったいま生まれて初めて、今年が永遠に続けばいいなどとくだらないことを考えた。


(2023.12.28)