※『神の星』と同一主人公の番外編
※読む人を選ぶ描写があるため閲覧注意
サル
キャッスルで接客をする女性たちの服装は下品だ。布の面積が明らかに狭い水着だったり、履いている意味がないと思ってしまう程に短いスカートだったり、肌を見せるための穴が各所にあいている服だったりする。しかし私には拒否権どころか選択権すらもない。
今日の私の衣装は肩が大きく出たドレスだった。高級感のある布地だが厚みが心許なく肌が透けているのではないかと心配になる。胸元も大きく開いているため気を付けていないと見えてはいけない部分が見えてしまいそうだった。この格好で西谷さんの前に行かなくてはならないのかと思うと溜息をつきたくなる。
廊下を歩いていると向こう側から見覚えのある人物が歩いて来た。青いスーツに白い革靴。噂をすればなんとやらで西谷さんだった。いつも周囲にいる美しい取り巻きたちや強面のお付きの部下などはおらず、彼たった一人で颯爽とこちらに向かって歩いてくる。表情は遠くからでも分かった。まるで獲物を捕らえたような鋭く不気味な瞳だ。その視線は鋭い刃物のように私の体に突き刺さる。
「よぉ、」
西谷さんは私の目の前まで来ると片手を軽く上げて挨拶をした。まるでたまたまここを通りかかり偶然私を見つけたかのような素振りだ。そんなのはまやかしに決まっている。私はキャッスルでの仕事をする前に控室で着替えてから必ずここの廊下を通るが、そのことを当然西谷さんは把握している。この人は私を待ち伏せていたんだ。
「それ新しい服か?誰が選んでんだが知らねえけど相変わらずセンスねえなぁ」
西谷さんはこちらに腕を伸ばしドレスに軽く、ありえないほどに優しく触れた。私は驚きからほんの少しだけ身を退く。それに気付いた西谷さんは眉間に皺を寄せ表情を歪ませた。
「なんだよ。んな怖がんなって……」
変わらない歪んだ目元のまま西谷さんは歯を見せて笑う。口角は上がり切っているものの明らかに目は笑っておらず、不気味に思いつつも目が離せない。西谷さんはドレスに触れていた手を移動させ今度は私の肩に触れた。何の障害物もないそこは肌が露わになっており、艶かしく撫でるように指先が動く。呼吸が浅くなった。
西谷さんは何を思ったのか突然私の腕を掴み引っ張った。無駄に広く長い廊下の端に移動し、私の背中に手を当てて壁に強く押し付ける。何が起きているのか分からず抵抗の声すらも上げられなかった。黒いネイルの大きな手が後ろから私の口を覆う。まるで誘拐犯が人を攫う時のような行為にひどく混乱した。
ふと気が付くと西谷さんは私を後ろから抱き締めるようにしながら服の中に手を差し込んでいる。嘘だ、こんな所で。そう思ったが、背中を覆う体温も私の体を這うように動く手の感触も全てが今起きていることは現実であると知らしめている。胸を強く捕まれ痛みを感じた。
「西谷さん。誰か来ます。やめてください」
抗議は当然のように受け入れられなかった。西谷さんは私の後頭部を掴むと黙らせるかのように顔面を壁に押し付ける。その間も彼の手が止まることはなくそれどころかエスカレートした。露わになった私の背中に濡れた舌があてられ、それが首の辺りまで移動し肌を舐めあげる。卑猥な雰囲気と舌の熱さに私の口から吐息と小さな声がもれた。
「お前のその声、ここを通る奴全員に聞かせてやりてえよなぁ?よぉ」
耳に強く噛みつかれ、その上で囁かれて気が遠くなった。『全員に聞かせてやりたい』と言いつつも西谷さんの手は再び私の口元を覆い、矛盾した彼の言動に理解が追い付かない。体を弄っていた手はいつの間にか隙間から入り込み、湿り気を帯び始めたそこにゆっくりと指が侵入してくる。『やめてください』などと言いつつも結局は期待していた自分があまりにも愚かで泣きたくなった。
適度に弄ばれ解された後に歪で硬いそれが腰に当たっていることに気が付く。嘘だ、嘘だ、嘘だ。何度も頭の中で繰り返すが嘘であるはずもなく、ベルトを外す金属音が聞こえた。床に投げ捨てられたのであろう避妊具の外装パッケージを視界の端に捕らえてからすぐ、ひどい異物感は私の脚の隙間から体の中に入りこんできた。
何もない冷たく無機質な壁に手をつき、ただひたすらに後ろからの衝撃と快楽を受け入れるしかなかった。片足を持ち上げられ動きは次第に激しさを増して行く。まるで内臓が押し上げられているかのような圧に耐えた。私の口を覆っていた西谷さんの手は次第に崩れ、綺麗な指先が口唇を割って口の中に入ってくる。耳元に響く低い呼吸音があまりにもいやらしく、それでいて恐ろしい。
誰か助けて。彼を止めて。そう思っても私の口から出るのは助けを求める言葉などではなく、ひたすらに下品な喘ぎと西谷さんの名を呼ぶ声だけ。どれだけ足掻いて抵抗しようとしても何も敵わない。深みにはまり抜け出せず、ただひたすらに飲み込まれていく。
私はそのままあっけなく果てた。あまりの情けなさに涙で視界が揺れる。西谷さんの指は最後まで私の口に入ったまま、まるでどろどろと溶けるかの如く唾液にまみれていた。
(2023.11.18)