焼きつく記憶色 - 7

 あらゆる物を吹き飛ばし、たくさんの命を巻き込んだあの嵐の原因は一体何だったのか。街の惨状を目にした人の中で、まず真っ先にそれを考える人は存在しなかった。電柱はまるで細い枝のように折れ曲がり、建物の部品や剥がれ落ちた壁の一部が散乱する道路は、まるで道自体が波打っているようにすら見える。

 辺りは生存者への希望を打ち砕くように不気味なほど静まり返っていたが、優しい日の光が街を照らし、鳥の群れが上空を飛んでいく。嵐の後の澄んだ空気を割くように、一台のピックアップトラックが街の出口へと繋がる道をゆっくりと走り抜けていった。

 運転席に座るクロエは助手席のマックスに声をかけようとしたが、やめた。嵐に襲われ破壊された街を目にした時、言葉を失ってしまった自分がマックスに何を言えばいいか分からなかったからだ。マックスはただ窓の外を流れる壊れた街を眺め続けている。

 道の途中で遺体を見つけ思わず車を停めると、クロエは黙ってマックスの肩に手を置いた。お互いにどんな言葉を口にするのが適当なのかが分からずにいたが、ただ触れ合い目を合わせるだけで十分なのだと感じる。今はただマックスにはクロエが、クロエにはマックスが居ればそれでいいと。

 街の出口を示す看板が見えてきて、クロエはアクセルを踏みスピードを上げた。嵐に負けずに立っていた木々の葉たちがまるで二人を見送るように揺れ、音を出す。

 嵐でバラバラに壊れてしまったアルカディア・ベイ。しかしその街は確かに存在した。この街で暮らし、この街で出会い、この街で愛し合った人たちの記憶が消えることはない。壊れた世界をただ見下ろすだけの空の色は息を飲むほどに美しく、まるで愛でるように優しい潮風が街を撫でた。

END